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中華街・ヤワラートの外れにある民家。
観光区域でもないのに、中華提灯が多数吊り下げられている。

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 タイという国に多くの華人(移民してきた中国人の子孫)が住んでいることは有名です。
その人口に占める割合は、国全体で10%以上、首都バンコクに限れば半数近くに及ぶという見方もあります。
(狭義のタイ人との混血が進み、また華人と答えるかは個人の民族アイデンティティにもよるので、正確な値は不明)。
そんなタイの華人は現地の文化にかなり同化していると言われますが、一方で、彼らの生活は中華民族の文化的表象に満ちています。

例えば、バンコクの中華街・ヤワラート。
メインストリートの写真は多くの方がご覧になったことがあると思います。
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メインストリートは観光客の目に触れるので、分かりやすい「中華っぽさ」が前面に押し出されています。
観光向けの中国文化が大通りで見られるというのは、日本の中華街でも同様だと思います。

しかし、ここヤワラートが一味違うのは、路地裏や地域の外れの様子です。
例えば、メインストリートから細い路地に入っていくと、このような光景を目にします。
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日本で見かけることはほぼ皆無ですが、タイでは街中に中華廟が多くあります。
それらは観光向けではなく、地元の人々の日常的な信仰の目的で大小様々に設けられています。
ヤワラートのあまり人が寄り付かない路地裏にも、上の写真のような廟が複数見受けられます。

更に、今回はメインストリートからは外れた場所も散策しました。
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観光客の多いヤワラート通り(地図中の「Yaowarat Rd」)とは、反対方向です。
上の画像の赤いラインに沿って歩きましたが、南(下)の方ほど観光とは無縁の、地元民向けの市場のような通りです。
しかし、そこでも下の写真のような光景を目にします。
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機械部品の問屋さんでしょうか。
軒先には中華提灯や漢字で書かれた護符、屋内には「春」と書かれた札などが見えます。
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こちらは玄関でちょっとした食べ物を売っている民家。
中華提灯の他、入口の両サイドには「对联」という、対句を書いた2枚の赤い紙が貼ってあるのが見えます。
また、写真を撮り忘れましたが、周辺では端午の節句用にちまき(粽子)が売られているのも見かけました。

このように、観光区域の外でも、華人の家では中華的な文化の表象を飾り続けています。
「祖国の言葉さえ忘れた」と言われるタイの華人にとって、中華民族としてのアイデンティティは希薄かもしれません。
しかし、彼らの生活の中に中国文化は今なお脈々と受け継がれ、そこには中国本土からは姿を消しつつある「古き良き」中国の味を見出すことができます。